唐突なようだが、私は齢55歳にして財産を失った。家も仕事も金も無く、夜逃げする羽目になったけれど、もうあれから3年経過している。
人生どうにかなるものだ。今の自分の置かれた状況には、とくに不満は感じていない。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれというが、あれは本当かも知れない。
もしも夜逃げをしなかったら、まだ瀕死の状態で生活を続けていたのだろうか?それはどんなにかツライ日々だったことであろう?
何もかも失くしたが、それはいっそ清々しい。とにかく新生活が始まったのだから。
なんとか社会復帰して、住む部屋を探した。探し方は若い頃と状況がずいぶん変わっていた、スマホがあれば不動産屋に行かずとも幾らでも物件を探せるのだ。
住む環境は重要だと思う。住んでいて落ち着けなければ疲弊するばかりだ、心も身体も。
スマホで幾らでも物件は探せたが、実際に見てみなくては、写真や見取り図だけでは分からない。
私には霊感めいた力は何もないが、やはり土地には「気」のようなものがある。それは街や人々が創り出す偶然によって醸し出されるものなのか?
簡単な話、その部屋に入って気分が上がるのか、下がるのかは大事だろう。
予算は限られていたが、明るく清潔感のある部屋を探し当てた。もちろん借物だが、それでも、今の私にとっては奇跡的な出来事であった。
私の部屋にはベッドと、ニトリで買ったシンプルな机と椅子、あと冷蔵庫が1つ、小さい電子レンジ。他にはとくに何もない。
何もないけど満ち足りている。今月やっと中古のノートパソコンを購入した。
この場所は、私に幸せをもたらしてくれている。
2/11/2024, 5:55:40 PM