眠り子

Open App

手ぶくろ


20xx年。人類は1人1人ガラスケースの中で生きる法律ができた。
あらゆる対人での事故や事件を防ぐために生み出された法律と噂されていた。
法律ができた当時、私は20代後半だったが私より上の年代は反対していた人が多かったことを覚えている。
だが反対も虚しく、全人類ガラスケースに閉じ込められた。

人間恐ろしいもので、そんな生活を何十年も過ごしていれば人の温もりや心通った関わりをほとんど忘れてしまうのだ。
そんな中で私に人の温もりを微かに思い出させてくれるのはかつて家族に編んでもらった手ぶくろだ。
お店に売られていない私だけに作られた手ぶくろ。
スイートピーが刺繍されたこれだけが、記憶の中の温もりを思い出させてくれる。



12/27/2023, 2:31:21 PM