竹崎セン

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美しい花にはね、棘があるのよ。


彼女が言った言葉を時々僕は思い出す。

彼女が最後どんな想いを抱えていたかは僕にはわからないし、限りなく距離の近い第三者であったとはいえ推察できるものではない。

ただ、彼女が僕に並々ならぬ憎しみを抱いていたことには変わりないだろう。

「美しいからこそ、みな手折りたいと渇望する」

ガラスの向こうで美しく笑う女の言いたいことが今はわかるような気がした。

「でもね、あるのは棘だけじゃないの毒だってあるわ」

「私が幼い頃、母が薔薇の刺に刺されたことがあったの。なんでもない、傷だったわ。だけど、数カ月もしないうちに亡くなった」

「あの庭園で、あの人を見たとき母が帰ってきたのだと一瞬思った。でも、あの人は母とはほど遠い人だった。」

「あの人の隣にいられるあなたがいつも憎かった。でも哀れにも感じた」

「私と同じ、花の毒に酔ったあなたが…」
いつもより低い声で呟いたその顔はとても寂しげで、恨みがましくも綺麗に映ったのを覚えている。

閑静な通路を過ぎ、入り口から出ると暖かい春の陽気が迎える。

腕時計を見るともうお昼だ。

通りに出て、タクシーを捕まえる。

今から向かうそこは秘密の場所。僕とあの人、あの人と彼女だけの、秘密の場所だ。


お題【秘密の場所】

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サスペンスの最後的な。時間がなかったので中途半端。薔薇の棘は少し実話から入ってる。

3/9/2025, 9:54:25 AM