名無し

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《赤い糸》

その人を一目見た時、運命だと思った。
タイプなんて俗っぽいものではなく、
恋なんて美しいものでもない。
もっと本能的で、仄暗く、「それ」が必要不可欠なものなのだと心が理解している。


運命の人というのは、2人いるらしい。
1人目は愛を失う辛さを教えてくれる人。もう1人は永遠の愛を教えてくれる人だそうだ。

私は今まで人に恋をしたことがない。
つまりこれが1人目の運命の人だ。
失う愛を教えてもらうためだけに、繋がる糸。この人と歩んでも、悲しみを知るだけ。
わかっていて、自ら地獄に身を投じた。


1人目は、愛を失う辛さを教えてくれる人。
2人目は、永遠の愛を教えてくれる人。


それならば、永遠の愛なんていらない。

2本目の赤い糸は、自ら断ち切った。
たとえそれが自分を地獄から引き上げてくれる蜘蛛の糸だとしても、私は自らその糸を焼くだろう。真っ赤に燃える炎の中で、2本目の運命が黒く焼き切れるのを眺める。
たとえこの身を妬くのがこの炎であっても構わない。

賽の河原の石は何度でも積み直される。
報われない恋のように終わりがないとしても、ただ積み続けるしか、道は残されていないのだから。

6/30/2024, 12:02:53 PM