NoName

Open App

最後のLINEは「ハッピーバースデー!」だった。それを受け取った日、私はありがとうのスタンプだけ送って、先輩をブロックした。
何度となく彼を拒絶した。私にとって絶縁だけが、忘却だけが、未来に進む方法だったから。自分から引っ付きに行っといてなんなんだろう。恋愛は私が思っているよりもずっと恥ずかしくて、情けなかった。自意識の肥大そのものだった。先輩のことを知れば知るほど自分の歪みが浮き彫りになっていく。隣にいたいのに、いるには決定的な何かが足りないような気がした。
取り繕って、嘘を重ねて、へらへらして、ようやくこのノーマルエンドに辿り着いた。良い思い出。自意識過剰だった、あの頃の意味不明で輝かしい思い出。
私はずっとそれになりたかった。

時々、LINEの背景と音楽を変える。
一週間位経って、先輩のも変わっていることに気づく。
その度に記憶の波にさらわれていく感情を、貝殻のように拾って海へ放り投げる。もうこの浜に来ちゃ駄目と。

9/1/2024, 2:32:51 PM