元さん

Open App

「今日はね、背中から翼が生えてきたんだよ」
彼女は何の邪気も含まぬ顔でそう言った。
浜辺の白い光が彼女の体を包み込み、本当に天使になったんじゃないかと錯覚させる。きっと彼女は何も嘘偽りなく僕を愛していたんだろう。
異形症なんてものがこの世になければ僕たちはとっくに幸せに慣れていたはずだった。
心臓が炎で包まれた僕と、体から万物が生えてくる彼女。昨日までは枯れた枝が生えていた。
この街でのみ発現した、謎の病。人工的なものなのか、はたまた本当に突然変異なのか。真相を知ってるはずの父と母はどこかへ消えてしまった。
その中でも病状が深刻だったのが僕と彼女だった。世間が僕らを蔑み、逃げ場を失って辿り着いたこの浜辺で、僕たちは出会った。

10/7/2024, 4:44:29 PM