影山零

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「ユウちゃん、お昼何食べたい?」
「いいよ。ばぁちゃん、俺買ってくるからここで待ってて。」
「あら、そう。わかったわ。行ってらっしゃい。」

もう七年も使ってる古い靴を履いて、歩きでスーパーに行く。真上に廻る太陽を見上げ、涙を溢れさせないようにする。

いつからか俺のことを、俺がまだ小学生の頃の呼び名「ユウちゃん」と呼ぶようになった。

認知症だと気がついたのは俺が会社でまだ働いていた頃、おばぁちゃんの家に住んでいた。夜遅くまで働いていて、帰るのが遅くなってしまった。深夜に帰ると、家にばぁちゃんが居なかったのだ。心配になり、警察に連絡すると、近所の公園で、ユウちゃん、ユウちゃん、と言いながらブランコを眺めていたらしい。警察から認知症の可能性があると言われて発覚した。

正直言って、悲しかった。悔しかった。

こんなことを言うのはよくないとわかっているが、あえて言わせてもらうと、「死んだと同じ」だと思ってる。今の俺を見つめてくれない。知らない人を介護しているような、そんな感覚。

ため息の毎日が続くならどうか、少しでも望みがくれると嬉しい。周りからの共感じゃなくて、ばぁちゃんからのプレゼントなんかでも嬉しい。ただ、ばぁちゃんはまだ死んでないという確証が俺にわかるようなものが欲しい。どうか……どうか……

「ばぁちゃん、買ってきたよ。温めるから待ってて」
「ユウちゃん、おいで」
「なに?」
「ユウちゃんにプレゼント」
布の袋が目の前に置かれる。
「お誕生日おめでとうね〜」
「覚えて行くれたんだ……
……ありがとう」

テーマ-【子どものように】

10/14/2024, 8:12:04 AM