「夜の海は妖怪が出るから行っちゃダメだよ。」
夏休み、オジイの家は海が近く、従兄弟たちと海で遊ぶのが一番の楽しみだった。
ちょうどアニメの『ゲゲゲの鬼太郎』で牛鬼の回が放送されていたので、オジイの言葉はますます恐怖を感じさせた。
「こんな妖怪が出るから、夕方には必ず帰ってくるんだよ」と言われ、その言葉が心に深く刻まれた。
二階の窓から見える夜の海は、真っ暗で底知れぬ恐怖を抱かせた。波の音が不気味に響き、何かがそこに潜んでいるような気がした。
時は流れ、私は大人になり彼女と夜の海岸沿いをドライブしていた。
もう妖怪が実在しないことは知っている。
しかし、あのとき感じた恐怖が再び胸をよぎった。
どこかおかしな雰囲気。
そして、ふと頭の中で警報が鳴り響いたように感じた。
まるで鬼太郎の妖怪アンテナが反応しているかのような、身の危険を告げる予感。
「これはドライブどころじゃない」と思い、急いでアクセルを踏んだその瞬間、リアドアが【ドンッ】と鈍い音を立てた。
私はパニックになり、アクセル全開で追いかけてくる暴走族から逃げた。
何とか逃げ切ることができたがリアドアは蹴られた跡が残った。
やっぱり、夜の海は妖怪が出るんだと、オジイの言葉が身にしみた思い出でした。
8/16/2024, 8:02:41 AM