秋恋
女性を愛する覚悟は僕には無いが、
少なくとも、恋愛対象としては見れるのだと
感じた出来事が昔あった。
それは、カッコイイ女性が
高校の部活動にいたからだった。
自分の考えや意見をハッキリと伝えられて、
相手にダメなところはダメとしっかり言える人。
綺麗な声を持っていて、心地よい。
きっと良きお母さんになれる。そんな女性だ。
少なくとも、
いいお母さんになれると思った女性は、
その人が初めてだった。
部活動で手を動かしながら、頭の中で考え続ける。
この感情の答えは、些細な信頼だろう。
だけど、その人と僕はあまり喋ったことがなかった。
ならばあれは恋の始まりだったのかもしれないな。
本当は出会った時から一目惚れしていた?
それとも長い間同じ空間で部活動をしていたから?
そう感じても、
この気持ちは捨てるしかなかった。
心の性別が無い人間だから「僕」を名乗っていたのに、
恋愛対象として見れるのは男女両方だったのか?
僕は男にも女にもなりきれない未完成の人間だなと
気付いても、寂しく笑うしかない。
それ以上に僕が女性を愛せない理由がある。
それが過去のトラウマだった。
友達の女の子から仲間外れにされ、
母親から暴言を言われたことがあった。
どこをどうしたって糸が切れたままのように、
僕は女性との関係を断ち切っていた。
糸を修復しようと、接し方も話し方も分からない。
また一人になるんじゃないかと恐れるより、
気楽に話し合える男性を愛する方がいい。
だから…女性に恋をしてしまったこの気持ちは、
捨てて、隠して、忘れ続けないと。
…こんな恋に、気付かなければ良かったな。
10/9/2025, 11:02:43 AM