白井墓守

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『吹き抜ける風』

心に吹き抜ける風が、どうにも嫌いだった。

こんな言葉、表現を聞いたことはないだろうか。
彼の言葉により、私の鬱屈とした心の中に、まるで一陣の風が吹き抜けたように晴れやかになった、……と。
私はこんな言葉が大嫌いだった。

昔から、自分主義で自分勝手で、とにもかくにも自分で決めなければ気がすまないたちであった。
だからこそ。

『君の主張は間違っているよ、だって僕らは――■■じゃないか』

そう言われた事が、そう言われて自分の心に吹き抜ける風が訪れてしまったのを感じたとき……私は殺さなければならないと、決めた。

「それが、あなたが十年以上も続いた親友を殺した理由なの? 意味が分からないわ!!」
「ふふ、女刑事さん。それは君が健全に生きてきた証さ。世の中には私みたいなのが隠れてゴロゴロ居るもんだ。お気をつけなさい」

――人が人を殺す理由なんて、誰にも分からない。


おわり

11/20/2025, 6:43:11 AM