突然の君の訪問。
ピンポーン。
家で曲を作っていた時に突然鳴り響いたインターホン。こんな夜中に鳴るなんて、危ない人か何かなのでは……と警戒してしまう。
「いやでも、うーん……ね、念のため……」
一応、覗き穴から見てみようと近づいた途端、身につけているスマートフォンが振動した。
「ぅわッ!?」
心臓に悪い……と少しぼやきながら画面を開いた。それは自分の知人からの連絡であった。
『突然の訪問ごめんなさい、邨松さん。
本当に急で迷惑だと思うし、嫌なら
断ってもらってもいい。邨松さんの家で
しばらく過ごしてもいいですか』
全ての文章を読み終わる前に玄関のドアを開けていた。自分の頭では理解できないくらいに体が反応して咄嗟に判断をしていた。
「額狩さ、ん」
「……ごめんなさい。本当に……」
彼女は非常に弱っているように見えた。生気の無い目。その下には泣き痕。常に美しく保たれていた服装にはアイロンがけがされていなかった。
「……大丈夫です、大丈夫ですから」
「傍に、いてもいい?」
「もちろんです」
「本当に……?いなくならない……?」
「はい、どこにも行きませんから」
「……」
「……一緒にわたしの家へ帰りましょう。エレクトーンが置いてあるので、少し狭いかもしれませんが……」
「帰る……」
「ええ、一緒にいましょう……」
8/28/2023, 12:07:10 PM