―空が泣く―
帰り道、曇り空の中をひとりきりで歩いた。
潤んだ瞳を隠すように、俯きながら早足で歩く。
きっと私を気にする人なんてどこにもいない。
そう思っていても、やはり顔は下を向いてしまう。
ポツン。
手の甲が一滴の水で濡れた。
見下ろしていた手の甲から地面にピントを合わせると、
地面には細かいドット模様の染みができていた。
上を見上げると、ポツリポツポツと、水が降ってきた。
涙だ。
空が、泣いている。
泣かないで――
そう思ったのに、私の願いは叶うことなく、
逆にエスカレートしていって、空はより激しく泣いた。
ねぇ、お願いだから、泣かないでよ。
折角私が頑張って涙を堪えてるのに、
我慢してるのが馬鹿みたいじゃない。
――私も、泣きたい。泣きたいよ…
そう思って唇を噛んだ。
我慢しようと思ったのに、どうしても堪えきれなくて、
顔に涙が伝う。
空が泣く。
私も泣く。
ねぇ辞めてよ。
そんなに大きな音を立てて派手に泣かれたら、
私の涙がちっぽけで、どうでもいいように見えるじゃない。
私の涙を、
拭ってくれる人も、
止めてくれる人も、
許してくれる人も、
どこをどう探そうと絶対いない。そうに決まってる…
そう思うと、歯止めが利かなくなった。もう、涙は止まらない。
止めてくれる人がいないなら、もう自力で止めなくていい、
そうも思った。
最近は急な雨が多いからと、通学カバンのポケットに
突っ込んである折り畳み傘も差さずに、
泣きながら歩いた。もう早足では歩けなかった。
だからやはり俯いたまま、ゆっくりと歩いた。
私は、人目を気にして、声を押し殺して泣いた。
泣いた、泣いた、泣いた。
空は、人の都合なんて考えず、思いっきり泣いた。
泣いた、泣いた、泣いた――。
9/16/2022, 2:16:18 PM