題名…天才
私は小さい頃からバスケをしてきた。小学校中学校、そして高三の今でもそう、もう高校三年生かーなんて友達と話して部活に向かう今日は新しい一年生が入ってくる日。ずっと続けていたから教えるのは慣れてるし一年生を見た時にそんなずっとやってるていう人はいなかった。
体育館について部活の準備をしていると早速一年生が体育館に入ってくる。一応副部長なため一年生に指示をして並ばせ自己紹介を始める。顧問は今日は予定があってこれないらしい。
だから私達で決めなければならない。
“簡単に基礎練やってミニ試合みたいなのしようかな”
と部長の口から放たれる言葉何年もやってて一番聞き飽きた言葉だ。中学生の時は基礎練なんてつまんないと思っていたがここまでくると慣れてしまった。
適当にドリブルだのなんだのしてる時一年生に教えてやれよーなんて言われたので渋々教えたら1人でできそうなやつを探して話しかける。
「バスケ初めて?」
「はい!」
と元気に返事をしているこいつが私はすごく嫌いになりそうだった。どうせすぐ辞めるでしょ。ていうか高校でやるとか舐めてんの?心の中でイライラを溜め込み口からは甘い言葉を囁く。
「こうするといいよ」
なかなか自分も鬼だと思った。少し難しいよねーなんて煽る言葉を決めている最中私の大嫌いな奴は軽々とこなした。
は?とは思ったけど仕方ないこんなの誰にだってあるしー、
「先輩ありがとうございます!」
他の奴らが寄ってたかって褒める。次第にあいつは天才と呼ばれるようになった。
自分のせいで上手くなるこいつが憎らしかった。
小学生の頃は初めて自分の顔よりもデカくて重いボールを持ち、泣き泣き怒られながらなかなか上達しない自分を恨んだのが思い出だ。だからこそ周りに追いつきたい一心でただボールを触り続けた。周りから上手い、天才!と言われることが日常だった。だからこそ自分より当たり前だか下手なこいつに負けたくない。
時間が経つごとにこいつは上達していった。監督も周りも大人も親も驚いていた。自分でもすごいと思ってしまった悔しくて悔しくて仕方がなかった。
とうとう3年の引退でみんなで記念にゲームをすることになった。一年、2年VS三年だ。
一年に三年のミスで一点取られてしまった。しかも嫌いなあいつに。ミスした奴はヘラヘラ笑っていた。うざかった、お前のせいで取られてるのに笑ってんじゃねぇよ。と言いかけた言葉をどんまいどんまい!次々!という言葉に変え放つ。
ボールを素早くドリブルし、相手を避ける。最後の壁が嫌いなあいつだった。素早くかわし、ダンクしたつもりだった。
横にはあいつの手があった。
「届いて…!」
力を振り絞りボールを押す。床に叩きつけられる音がした、あいつは勿論妨害でアウトだが私はそんなことより、自慢のドリブルを遮られシュートをあいつに蹴散らされた絶望の方が大きかった。私は天才ではなかった、ただ少し天才と言われただけの自分に酔っていただけだった。あいつは天才だ…
私が天才のあいつが嫌だったのは、自分自身が天才ではないことに薄々気づいてたから…
「先輩は天才です。努力の」
あんな奴に気付かされたのが苦しかった。あいつに言われたのが悔しかった。
私は立ち上がり荷物を持って体育館をでた。
7/9/2025, 11:55:44 AM