紫陽花《しょか》

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 朝は五時に起きて、勉強。六時半には朝御飯。七時には制服に着替えて、登校までの数分でまた勉強。
 登校時刻は誰よりも早く、鍵を開けて教室に入り、授業が来るまで勉強。
 学校が終わると部活なんてない。何よりも早く家に帰って手を洗い、親に今日あったことを話すこともなく勉強。夜ご飯はさっさと終わらせるために淡々と。お風呂に入っている間だけ、こっそりスマホで遊んでる。それでも出来るだけ早くお風呂から出て、髪を乾かす。髪の湿り気が空気に消えた時には、歯磨きを終わらせる。
 そのまま自室に戻って十二時まで勉強。そしてベッドで睡眠をとる。

「これが私の一日ルーティーン。でもなんでわざわざこんな面白くもないこと聞くの?ごく普通の生活だけど」
 目の前の友達は顔を伏せる。私より少し身長の低い彼女は、私を見上げて聞いてきた。
「それ、全部一人で?」
「いやいや、ずっとお母さんが一緒だよ。勉強もいつも近くにいて教えてくれるの。誰よりも賢くなれるように教えてあげるからって張り切ってくれてるんだよ」
「……そっか」
 彼女は私の手を握ってきた。その力は強く、どこに行こうともしていないのに、私を引き留めているようだった。
「ね、今日、私の家に泊まりに来ない?」
「そんな突然。絶対無理だよ、お母さんが今日も勉強教えてくれるから…」
「今から、一緒にウチに行こ。私だって勉強教えてあげられるしさ。…教えてもらうけど」
「ふふ、まったくもう、何がわからないの?見せて、教えてあげるから」

 その日、友達の家に半分強制的に泊まった。次の日に家に帰るとお母さんはいなかった。私の部屋には傷があらゆるところに付いていて、近くには薄汚れた包丁があった。

【私の当たり前】
お題が更新されるごとに進む物語No.1

7/9/2023, 12:30:40 PM