背伸びしたネコ

Open App

真夜中


みんなが眠ってしまい、家の中も家の外も静まり返ったこの時間。

自分の心の声にそっと耳を傾ける。

昼間は誰かの心の声でかき消されてしまって見向きもされなかった為か、私の心の声はなかなか出てこようとしない。

「お待たせ、みんな寝てしまったからそばに来て大丈夫だよ。」

そう伝えると、ふてくされた顔をひょっこり出して、もじもじ体を揺らしながら私の側に近づいてくる。

近くまで来ると、耐えきれなくなったのか、それは私に抱きつき泣き出してしまった。

わたしは精一杯それを優しく抱きしめて、慰める。

ポケットにしまっていたそれの大好きなチョコレートを渡して、偉かったね、がんばったねと伝え、頭を何度も撫でてあげると、それはうんうん、と大きく顔を振り大粒の涙を溢した。

2人で手を繋いで月を眺めた。
大人しく優しい光で、私たちの心を落ち着くまで見守ってくれているようだった。

優しいその光に照らされて、私たちは眠ってしまった。



目が覚めると、あんなに泣いていたそれは楽しそうに野原を駆け回っていた。

私が起きたのに気づくと、タタタタッと駆け寄り、チョコレートをかじりながらにっこり笑って、

「おはよう、また一緒に月を見に会いにきてね。」

そう言って、私の背中を押したかと思うと、またタタタタッと走ってモンシロチョウを追いかけていった。


「わたしは君をわすれがちでごめんね。

これからは君を笑顔にすることも決して忘れないよ。

いつもありがとう。」


そう呟いて、君の最後にくれたあの優しい笑顔を思い出してフフッと笑って今日へと歩いていく。


今日もまた、誰かの心の声にかき消されそうになりながら君の声を探して耳を傾ける。




5/17/2023, 4:45:41 PM