空ノ宵

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「ねえ、きみってまるで繊細な花のようだね。」

誰?誰が私に話しかけてるの?

「どうして君はここにいるんだい?
 そんなに疲れているのに。
 体は悲鳴をあげているのに。」

やめて。話しかけないで。

「あーあ。僕だったらこうはしないのに。
 良いこと思いついた!僕と一緒に逃げよう?」

逃げる?そんなの無理に決まってる。
どうせこのセカイから逃げ出せないんだ。
みんな私を非難する。

「だからこそだよ!ほら、手を取って。
 ラクになろうよ。僕も一緒にいるからさ。」

優しい目、声をする彼に
私はすぐに心を許してしまったみたいだ。
どこかで聞いたことがあるような声。
会ったことあるような雰囲気。

「あんまり気が乗らない感じ?
 まあ、まだ考えても良いけどさ。」

…いく。一緒に、いかせて

「じゃあ、決まりだね。
 もう君は心も体もズタボロじゃないか。
 お疲れ様。」

ぎゅっと抱きしめられたような優しさに包まれ、
思わず涙がこぼれる。
こんなあたたかさを感じたのはいつぶりだろう。

「…上手に泣けなかったのかな。
 いっぱい泣きな。つらかったね、苦しかったね。」

そう、私はずっと我慢してた。
耐えないと、耐えないと、って。

「よしよし、いいこいいこ。
 疲れちゃったね。
 …逝こうか。」

私は名前も知らぬ彼と手を取り
優しさに包まれながら
ずっと憎んでいた社会を見渡す。
そして星空を見上げ
記憶から星空をなくさないよう目をきゅっと瞑り
私は自由な空へと一歩踏み出した。







『繊細な花』

6/25/2024, 1:57:27 PM