『未知の交差点』
…ここはどこだろう。
あたりは霧で覆われていて何も見えない。
どうやら僕は、死んでしまったらしい。
ここは俗に言う「あの世」のようだ。
なぜ死んで、どんな姿で生きていたのか全く思い出せない。
上に大きな看板があるのに気付いた。
…ん?『未知の交差点 来世に続く道』?
前後左右に道が分かれている。
それぞれの方向に、何やら説明書きがされてある。
その道の良い点(⚪︎)と悪い点(⚫︎)について書いてくれているらしい。
東:虫
⚪︎空を飛べる。鳴き声や羽音に個性がある。
⚫︎大きめだと人間に怖がられる可能性が高い。
西:動物
⚪︎人間に可愛がられ、飼ってもらえることもある。
⚫︎野生だと自力で生きていく必要がある。
南:植物
⚪︎綺麗な色の花や葉を持ち、見栄えが良い。
⚫︎毒や花粉を持つ植物は、動物や人間から敵対視される。
北:人間
⚪︎夢や目標を持つことができる。感情表現ができる。
⚫︎生きるのが辛くなるときがある。傷つけ、傷つけられる。
…どの説明もポイントを押さえていない気がする。
そしてどれも抽象的で判断し難い。
でも、人間の『夢』『目標』ってなんだろう。
なんだかとても素敵なもののように感じる。
生きるのが辛くなるのは嫌だけど、それも人間の醍醐味なのかな。楽しいこともたくさんあるのかな。
…なんか、おもしろそう。
気付けば僕は北に向かって進んでいた。
この景色、前にも見たような気がする。
しばらく歩いて行くと、あたりは真っ白な光に包まれた。
気が付いたときには、僕は病室で力いっぱい泣き叫んでいた。
こうして、僕の新たな人生が幕を開けた。
10/11/2025, 3:08:05 PM