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急いで家を出る私の背中に、妻が言う。
「犬1匹、うさぎは5匹もらったけど、犬は散歩が大変だからね。返したよ」
「うん、……え?何の話」
振り返るとすでに妻の姿はなく、トイレからうっすら声が聞こえる。妻の声だ。
「うさぎ5匹はかわいいからね」

声に押し出されるように、私は家を出た。

うさぎ一羽であっても飼うのには生命を預かる覚悟がいる。それに友人の話によると、うさぎは懐いてくれるかが怪しい。
そして、我々はわんにゃん動物ふれあいパークを経営していない。複数の小型哺乳類を他人からもらうことがまず起こり得ない。

出かけている間も脳裏、いや脳表にうさぎ5羽が遊びに来る。万が一本当にうさぎたちがやってくるとしたら。生活はもっと大変になる。犬は返されて大丈夫だったのか、幸せに生きていけるのか心配だ。うさぎは耳のねているタイプか、長毛なのか……。

帰宅して聞けば、あれは昨夜の夢だと言う。

夢の話を興味を持って聞いてもらえるタイミングは、別れ際。

9/28/2022, 3:18:05 PM