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 星が浮かぶ寒空の下。公園のベンチに二人で腰を下ろして、ポツポツと言葉を交わした。それも次第に途切れてきて、沈黙が続く。君は僕との会話に飽きたのか、星を指差して何かを描こうとしていた。
「何してんの?」
「星座作ろうと思って」
 君はこちらも見ずに、指で空をなぞった。僕も釣られるように空を見上げた。藍色に染まった空に、白い光が点々と浮かんでいる。目で追って星座を描こうにも僕にはちんぷんかんぷんで、唯一オリオン座のような形だけなぞることができた。
 君の指はあちこち空をなぞっているが、同じ場所を行ったり来たりしているようにも見えた。
「できた?」
「うーん、もう少し」
 君の横顔は、顰めっ面をしていた。何を一生懸命描こうとしているのか、不思議でしかなかった。
 二人で公園に入り、ベンチに座ってからどのくらい時間が経ったのだろう。公園の時計を見るともう一時間は経過しているようだった。僕の体感としては、まだ、ほんの十分にも満たない。二人でいると、なぜかいつも針の進みが早かった。
「よし、できた」
 そう呟くと君は手を下ろして、ベンチから立ち上がった。カバンを肩に掛け、ブレザーを整えた。僕も釣られて立ち上がり、リュックを背負った。もういい加減帰らないと、色んな人が心配してしまう。
 僕は左手で君の右手を取った。指を絡めるとより近くに感じる。君は繋がれた自分たちの手を見て、口角を上げるのだ。
 駅までの道を二人でゆっくり歩き出した。
「何座を作ったの?」
「えー? オリジナル」
「名前は?」
「内緒」
 君は笑いながら僕を見上げた。その笑顔が星空の下で輝いて見えた。

 

『星空の下で』

4/6/2024, 4:26:36 AM