題:真の涙
涙の理由って、色々あると思うんだ。
例えば、哀しい時、怒っている時、嬉しい時、楽しい時。
私は、『哀しい時』以外泣いたことがない。怒ったことはないし、嬉しいと思っても笑うだけ、楽しいと思った時も泣かない。
だから、哀しい時以外の時に泣くというのことが正直よく分からなかった。
……あの日までは。
☽ ☽ ☽
日が沈みかけた刻、私はリンクに告白された。
よく笑う昔のリンクは、ずっと前になくなってしまって。ハイリア人のリンクは、気がつけば私よりも大人になっていて。
あの頃の笑顔も可愛かったけど、今の凛々しい顔も好き。そして、ただ感情を表に出すのが苦手なだけで、ただ自分に厳しいだけで、根は優しいところも好き。
「ミファーのことが、ずっと好きだった。そ、の、付き合ってください!」
いつもの無口無表情からは考えられないくらいに顔を真っ赤にして、つっかえながら告白してきたの。
微かに震える突き出された右手をじっと見つめて、私はそっと、リンクの右手に自身の右手を置いた。
ゆっくり顔を上げたリンクは、困惑していたみたい。
だって、私は泣いていたんだもん。
哀しい時以外の時に初めて泣いた。あの時の涙は、きっと『嬉しい時の涙』なんだと思う。
「喜んで」
あの時の涙の理由は、『嬉しかった』。
☽ ☽ ☽
その後、二人は付き合うことになったと英傑達に伝えた。
リーバルはぶっきらぼうに「おめでとう」と言い、ダルケルは心底嬉しそうにリンクの背中をバシバシ叩き、ウルボザは「ついに恋が実ったんだね!」と大いに喜び、ゼルダはやや顔を歪めながら「とても喜ばしいことですね。おめでとう」と言った。
(私はリンクのことが好きなのに……)
ゼルダは苦しそうに左胸を抑えた。
お題『涙の理由』
9/27/2025, 12:16:56 PM