ありす。

Open App

隣の家のお姉さんに恋をした。

「お姉さんは…その人のこと…好きなの?」

「えっ!?あ、ははっ…恥ずかしいなぁ。どうだろうね。でもその人に会いに、12年前の過去に戻りたいと思うほどには好きなのかも…」

子供ながらに思った。叶わない恋だと。
僕よりも12歳も歳上で、綺麗な黒髪は夜に散らばった星たちよりも光輝いていた。

「恥ずかしいから…もうこの話はおしまいね」

僕を優しく見つめるあの眼差しに恋をしていた。

「あっ……あのお姉さん!またタイムマシンの話しして!」

「好きだね?いいよ」

お姉さんとの会話を終わらせたくなくて、お姉さんが部活で研究しているというタイムマシンの話を興味もないのに聞いてた。
こんな何気ない日常だけでもお姉さんへの恋心は募るばかりだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「気を付けてね。はぐれないように手を繋ごうか」

ソースの香ばしい香りと甘いりんご飴の香りに包まれて、僕とお姉さんは夏祭りに来ていた。

「今日は絶対に私から離れちゃ駄目だよ!」

「お姉さん。僕もう6年生だから」

「それでも離れちゃ駄目だからね」

そういうとお姉さんは僕の手をぎゅっと優しく握った。

「今日はりんご飴を食べるをノルマに楽しもうかなー」

「お姉さん…りんご飴食べたいの?」

「お祭りと言ったら…りんご飴でしょ?」

目を輝かせてお姉さんは人混みの中を進んでいく。

「あれ!来てたの?」

お姉さんが、ピタリと立ち止まるとお姉さんが時々来ている体操服を来た人達がいた。

「私ら部活で居んの。来てるなら言ってよー」

「あははーごめんね。今日は…」

「お姉さん…僕のことは気にしないで。僕、あの石のとこにいるかるさ」

僕が石を指さすとお姉さんは、そこから離れないでねと忠告を残して友達と話しているようだった。

「りんご…飴」

お姉さんの喜ぶ顔が思い浮かぶ。
僕はそっとその石を離れて1人で人混みの中を急いだ。

「はい、りんご飴ね」

「あ、ありがとう…ございます」

少し遠い所にりんご飴の屋台はあった。
時折、車が通る。

「早く…戻らなきゃ…」

もしかしたらもうお姉さんは友達と話をしていないかもしれない。

「危ない…!!」

周りの声がより一層大きく聞こえる。
地面には先ほど買ったりんご飴が無惨にも割れていた。
僕は、力いっぱいに押されて地面に倒れている。


僕がさっきまでいた場所にはお姉さんが倒れていた。

「ちょっと救急車を!」

「女の子が轢かれた!」

「お、お姉さ…ん…?」

僕が近づくといつもの優しい瞳で僕を見つめている。

「あのね…本当は…あなたに会いたくて…12年前の過去に…戻ってきた…の。あなたは今日の…祭りで…私を助け…るために…車に轢かれた…ずっと眠っている…あなたを…みて…過去に戻りたいと…思った…会いに来…たよ」

「お姉さん…喋ったちゃだめ!今…タイムマシンの…話はいいよ!」

お姉さんは力なく僕を抱きしめる。

「今、しか…言えない!好き…だよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「その人のこと…好きなの…?」

「えっ……。そうだなぁ。好きだよ。多分、この先あの人以上の人には出会えないんだろうなって思うほどには…。というかこの話は…僕が恥ずかしくなるのでもう辞めです。」

12年の歳月が経った。
お姉さんはずっと眠ったままでいる。
お姉さんと同じ歳になってわかったことは…お姉さんもこんなに寂しくて辛い気持ちでいたのかな。

叶わないって思ってた恋だったけど、あの何気ない日常に何よりの幸せを僕は感じていた。

「あの…お兄ちゃん!私にまたタイムマシンの話しして欲しい!」

「好きだね?いいよ」

だから、僕も会いに来たよ。

1/22/2024, 5:10:51 PM