【列車に乗って】
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拝啓 この街のみんなへ
お健やかにお過ごしでしょうか?
みんなのお陰で私は無事教会に保護されて今、発進前の列車の中からこの手紙を書いています。
人生で初めて行事以外で書いたこの手紙が、もうみんなへ送る最後の手紙になってしまうかもしれない事を、後悔しています。
隣の男の子の風邪は治りましたか?
公園では今日も元気な歌が聴けますか?
お豆腐の値段は変わっていませんか?
もえぎちゃんはお姉ちゃんと仲直り出来ましたか?
ねこのなえ子はアパートの階段前で寝ていますか?
ねりさんは今年もまた植物を枯らしましたか?
私がまた帰れるまで、みんな待っていてくれますか…?
みんなには、まだまだ沢山聞きたい事がありました。
こんなに何も知らないけれど、みんなの事は本当に大好きでした。
だからどうか、私がまた帰れるその時まで、どうか待っていて欲しいです。
さようなら、またいつか。
えんじ より
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列車が走り出す。走り出した列車の窓から、紙飛行機の形に折った後悔を飛ばした。
紙飛行機は風に乗り空高く飛び上がって、終いには街の空に溶けて無くなってしまった。
それと同時に、私の心の絡まりも少しだけ綻んだ気がした。
3/1/2024, 9:46:12 AM