『ようこそ、不思議の国』
「起きて起きて!」
「…ん?」
急かす声に目を開けると、目の前には兎がいた。……兎?
「え!?兎!?…え!?喋ってる!?」
「わぁ!?大きい声出さないでよ!!」
「びっくりしたなーもう」と胸を撫で下ろすのは、どこからどう見ても兎で。信じ難い光景に目を白黒とさせていると、時計を確認した兎が「あ!!」と大声を出した。
「早くしないと遅れちゃう!ほら、君も急いで!」
「え、なに!?何処に行くの!?」
「パーティだよ!こわーい女王様に怒られちゃう!!」
「パーティ…?」
ぐいぐいと兎に手を引かれるまま森を抜けると、突如眩しい光が目を刺した。「目を開けなよ!」と言う兎の声におそるおそる目を開けると、信じ難い光景が目に映った。
たくさんの赤い薔薇、豪華なお菓子たち。そして、忙しなく動くたくさんの人。そのどれもが赤、黒、白で統一されていた。
「なに…ここ…」
「おや、君ももう来たのかい?」
その声とともに肩をポンと叩かれる。いつの間にか隣には背の高い、大きいハット帽の様なものを被った男性が立っていた。
「あ、貴方は…?」
「あぁ、ボクのことは気にしないで。それよりほら、もうすぐでパーティが始まるよ」
「本当だ!もうすぐ始まる!」
時計を確認した兎が嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。
「そんな!私早く帰らないと!」
「どうして?」
横から降ってきた声の冷たさにびっくりする。男性を見上げると笑顔を保っているものの、その目は冷たさを放っていた。
「どうしてって…」
「もうすぐパーティが始まるんだ。逃げるなんて許さないよ」
「逃げるだなんて、そんな…ただ私は…」
その時、カンカンカンと鐘が鳴った。
「女王様のおな〜り〜!!」
「あ、あれ……?」
鐘の音が耳に入ると同時に頭の中が真っ白になっていく。
「いや…どうして、私……?」
頭を抱えようと持ち上げた手を取られる。
「さぁ!行こう!女王様がお待ちだよ!」
「そうだよ!パーティを開いた女王様にご挨拶しなきゃ!」
「……うん!」
薔薇の匂いがすると同時に、私はそう返事をしていた。
駆け出した足にふわりとスカートの裾が触れた。
【My Heart】
3/28/2026, 9:25:10 AM