耳を澄ますと
耳を澄ますと、どこからか鼻歌がきこえてきた。
対して上手では無いけど、好きな歌だった。
声を辿ると屋上。
ドアが開いてて声が漏れてたらしい。
そこに居たのは、同じクラスの屋上の床に教科書を散らかして、勉強してる変なやつ。
図書館でやれよ、と思いつつも、声をかける。
「こんなとこで何してんの?」
見ての通り勉強だよ、そう返してくる割には、
ノートは綺麗だし、教科書のページも最初の方。
「さっきの歌、好きなの?」
うん、知ってるの?そう返ってきた。
「俺も好きなんだよね」
君の鼻歌で、俺たちは仲良くなった。
クラスも同じだったし、毎日一緒にいた。
次第に俺は、あいつに惹かれた。
放課後、屋上に行くとあいつがいた。
今日は運動場でしてる部活を見てたらしい。
ぼーっと眺めるあいつの顔は綺麗だった。
しばらく突っ立っていると、俺の存在に気づいたのか驚いてバランスを崩してた。
あれ、なにしてるの?そう聞いたら
空を見てた。そう返ってくる。
やっぱり変なやつだ。
またぼーっとしだすので、俺はこいつの隣まで移動した。
するとまた驚いて、今度は転けそうになった。
俺も驚いて、咄嗟に手が出た。
転ばずに済んだのは良いものの、すごい大勢になってしまった。
すごく顔が近い。こいつも驚いてフリーズしてる。
でも、分かりやすく、顔が赤くなっていた。
あ、照れてる。
目線を合わせて瞳を捉える。
可愛らしい目が俺を見つめる。
俺が掴んでいる手は、少し震えている。
「お前って、案外綺麗な顔してんな」
大きく見開かれた目を見つめる。
少しずつ、顔との距離を近づける。
すると目の前のやつは、ギュっと目を瞑った。
これは、合意って事にしておこう。
ずっと近くにいるために、女の子が好きなフリをして、隠してきた本音。
好きな子がいるから協力してほしい。それはただの口実に過ぎない。
本音と建前ってやつ。
それは、本能によって一瞬で台無しになる。
気がつけば唇に触れていた。
二人の秘密が更新された。___
これからも君を想ってる。
でも伝えるのは難しい。
もう少し、親友のままで、、、。
5/4/2024, 2:40:43 PM