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花咲いて
 
お爺さん、お爺さん、起きて下さい
シロが、いつになく、大きな声で、鳴いている
とうとう、袖口まで、引っ張るようになった
どうした、お腹が空いているのか、少し待っておくれ、
お爺さんは、ふと、お婆さんが、居てくれたら、お前にも、ひもじい、思いをさせずにすんだのにと、少し目頭が、熱くなるのでした、
どっこらしょと、言いながら、お爺さんは、薄い布団を上げるのでした
シロが、待ってましたと、言わんばかりに、一目散に走り出しました
おい、シロ、待っておくれ、お爺さんは、腰にぶらさげた、少し擦り切れた、手拭いで、溢れる汗を拭いながら、だんだん、シロの姿が、小さくなっていくのが、少し不安な、気持ちになってきた
丘を越えた辺りで、シロが、少し、寂しげに鳴いている声が聞こえてきた
丘の上まで、戻って来て、尻尾を振っている、姿が見える
早く、おいでと言っているようだ
風が、ヒューと背中を押してくれる
鳥さんたちも心配そうにお爺さんの背中を見ながら、おしゃべりをしている
ようやく、丘の上に辿り着くと、
そこは、真っ赤な彼岸花が、辺り一面、咲き誇っていた
シロが、優しい声で、ここだよ、と、教えてくれた
お爺さんは、呆然と立ち尽くし、涙が、止まらなかった
慈悲深いお顔した、お婆さんが、微笑んでいた

シロが、天に向かって、閃光を放っていた

心地よい風が、いつまでも、良い香りとともに流れていた

7/24/2024, 7:25:16 AM