廊下に出ても寒さが気にならなくなってきた頃だったでしょうか。
その日、用もなく音楽室に足を踏み入れました。
かすかなピアノの音に惹かれてのことでした。
同学年でありながらこれといった接点もない方がピアノを弾いておりました。
その後、週に三度ほどそこへ通うようになりました。
ピアノを弾いて聴かせてくれる人が物珍しかったのでしょう。
時が経ち、半袖では心もとない季節となった今でも「それ」は続いております。
初めの頃と変わらず相手との間柄はこれといった接点もないというもののまま。
されど、数えられる程度の言葉しか交わしたことのないこの関係は不思議と欠片ほどの砂糖を含んだ微睡みを誘うのです。
《穏やかな日々》
3/12/2026, 8:20:56 AM