奏桜希夜

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「今日のご飯、なにがいい?」

ある日の夕暮れ頃、眼の前を歩いていた若いカップルらしき男性が隣の女性に声をかけていた。

「んー冷蔵庫に残ってるのってなんだっけ?」

同棲しているのだろう。当たり前のように会話を続ける。

「あー、鶏肉とじゃがいもと人参と玉葱とかじゃない?早めに鶏肉は食べないと賞味期限近い気がするよ」

「じゃあシチュー!!」

夫婦のような仲睦まじい会話に何故かぼくの胸まで暖かくなった。
その二人は手をつなぎ目の前のスーパーに入っていった。

なんかいいな…と感傷に浸りながら歩いていると後ろから声が聞こえた。

「おーい、今日の晩ごはん何にするー?」

ちょうど仕事が終わった彼女だった。

「んー何が残ってるっけ?」

さっきのカップルの彼女を真似ていってみると彼女は目を細めながら答えた。

「んーとね、お肉は鶏肉があるからそれにテキトーに野菜をあわせて…シチューとか?」

何気ない偶然にぼくは笑ってしまう。

「うん。じゃあシチュー作ろっか」

「あ、でも君シチュー苦手だっけ?」

彼女と出逢ってすぐに話したことを覚えていてくれたようだ。

「ううん、あんま食べたことないってだけだよ。今日なら美味しく食べられる気がする」

彼女は笑いながらツッコミを入れる。

「なんで謎の自信に満ちてるの」

「なんとなく?」

笑い合いながらぼくは彼女と出会ってから好きな食べ物が増えたなと考える。

自分を変えようと思える人に出会えたぼくって幸せものだな…なんて思いながら彼女と手をつなぎスーパーに入っていった。


#君と出逢って

5/5/2024, 10:54:43 PM