死のうと思っていた。他人と同じように生きられない自分に、ほとほと嫌気が差して。しかしそんな時に、私は君と出会った。見ている景色が似ていたからか、少しずつ話すようになり、親しくなった。共に笑い、泣き、苦しみながら、それでもお互い励まし合って、気付けば10年生きていた。
そんな、過ぎ去った日々の宝物のような思い出を、私は君の結婚式のスピーチで語った。残念ながら私に文才はなかったので、会場の人たちをまるごと感動の渦に巻き込むことは出来なかったが、3割くらいは目を潤ませていた。私が友としてのすべてを込めた祝辞を、新郎新婦が笑顔で受け取る。幸せそうな君を見て、私の視界はみるみる歪んだ。「幸せになってね」の声は、さすがに震えた。
そうして式が終わった帰り道。夜の帳が下りてしばらく経った空は、今にも泣き出しそうだった。「傘、持ってくれば良かった」なんてひとり言が夜闇の中に溶けていく。眼の前で踏切の遮断機が下りた。カンカンと鳴り響く音。電車が通過する直前の踏切が、まさかこんなに魅力的だとは知らなかった。
3/10/2023, 12:04:07 AM