【君を照らす月】
君を照らす月を、僕は食べたいと言った。
すると君は笑って、僕にこう言った。
「お腹空いてるの? 仕方ないなぁ、ほら月見バーガーだよ」
毛むくじゃらの狼男が血走った目で、ヨダレをぼたぼた垂らしながら空腹を訴える発言は、聞く人にとっては見も毛もよだつような恐怖を与えるだろう。
しかし、目の前の天女の生まれ変わりかとも思えるズレた感じの人間は、どうにも掴めない性格で、こちらの狂気が宥められるのを感じる。
俺は大人しく、小さな小さなな手から唾を飲み込んで目を離し、小腹をも満たせないようなバーガーが一口で胃に入れる。
「どう? 美味しい?」
「…………うん」
「あは! やっぱり、秋になったら一度は月見バーガー食べなきゃ、秋って気がしないよね!!」
とある月下で。
狼男としての呪いに悩まされる男と、天女のような不思議な人間が出会うことにより、新たな物語が始まる。
――これは、食べたくないものが、泣きながら食べることになる話。
……続かない。
おわり
11/17/2025, 2:40:43 AM