ミミッキュ

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"柔らかい雨"

 なんだか急に頭痛を覚え、窓の外に目をやる。雨粒が窓いっぱいに張り付いている。雨粒が一つ、また一つと付いているのを見ると、今雨が降っているのだと認識する。「雨か」と独りごちて少し気分が落ち込む。
 けれどその雨粒はまるで窓に霧吹きをかけられたようで、とても小さく。
 音も、ザー、ではなく、サワサワ…、というような音で。
 今降っているのはただの雨じゃない、《霧雨》だ。
──霧雨が降るのは本当に久しぶりだ。最後に降ったのはいつだ?
 自分の傘を手に取って、外に出る。ワンタッチ式の傘を、バッ、と開くと、目を閉じて雨音に耳を傾ける。
 開いた傘に雨粒がぶつかり、柔らかく優しい雨音が響く。目を開けて外を見ると、柔らかなレースカーテンのフィルターがかかったような景色が広がっていて思わず「綺麗……」と呟く。まだ若干の頭痛はあるが、霧雨が作り出す柔らかな音と景色に頭痛がある事を忘れ、傘をさしながらあまりの美しさに立ち尽くす。
 だがすぐに、はっ、と我に返る。
──まずい、まだ仕事中なのに。早く中に戻らなきゃ。
 と、傘を閉じて傘についた雨粒を軽く振り落とし、いそいそと中に戻った。

11/6/2023, 12:36:53 PM