ファンタジーしか書けませんでした。
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【高く高く】
飛竜乗りになったのは、ただ高く高く飛びたかったから。卵の頃から育てた相棒と、どこまでもどこまでも、高く速く遠くへ。
最初の仕事は手紙の配達。
忘れ物の書類を急ぎで届けて、なんて依頼もあったなあ。
プレゼントを日時指定で運んだり。
空から花びらを撒いたこともある。あれはプロポーズの演出で頼まれたんだよな。
飛ぶのが楽しかった。
役に立てれば嬉しかった。
いつからか、国からの依頼が増えて。
食料を運んだ。酒を運んだ。薬を運んだ。
そこまではまだ良かった。
武器を運べと言われた。
断れなかった。
そして今日。
「運べ」と置いていかれたのは油の樽。
上空から敵陣に落とせってさ。
火矢を射掛けるんだってさ。
どれだけの犠牲が出るのだろう。
竜舎で相棒が「クルクル」と鳴く。
僕に甘える時の声だ。
美しくて気高くて可愛らしい生き物。
こいつを戦争の兵器にするなんて。
幸い今夜は雲が厚い。
月も暗く、星は見えない。
僕は相棒に鞍を乗せた。
暗闇は僕には何も見えないけれど。
こいつはちゃんと飛んでくれる。
さあ、行こうか。
高く高く、遠く遠く。
誰も知らない、どこか平和な場所まで。
10/14/2024, 11:34:47 AM