無音

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【19,お題:誇らしさ】

僕の誇れるところってなんだろう?

高校の帰り道、今日はテスト期間だから早めに学校が終わった日だ
「具合が悪い」と嘘をつき部活をサボって
いつもより日が高い通学路を歩きながら、何となく頭に浮かんだ疑問

僕の誇れるところ、強いて言うなら背が平均より少し高いところとか?
でも、背が高い人はいっぱいいるよな...

あ、折り紙の鶴をめちゃくちゃ綺麗に折れるとことか!
でも女子にはもっと綺麗に折れる子がいたっけ...

「僕の...誇れるところ...」

「おーい律!」

ダダダダダッーッと、慌ただしい足音
振り返ると、野球部らしい短く切った短髪に何故かユニホームの姿のままで走ってくる男子がいた。

「あれ龍介?部活あるんじゃないの?」

肩で息をする龍介、学校からここまでだいぶ離れてる気がするけど
...もしかしてぶっ通しで走ってきた?

「ゼェッ...ハァッ...」

「え大丈夫?死なないそれ?」

「ッ...大丈夫だ!毎日鍛えてるからな!」

はははっと太陽のように笑って見せる龍介
さすが野球部、体力の回復スピードがえげつない。もう元気になってるし

「ってか律、具合悪いって聞いたけど平気か?」

「あー部活めんどくてさ...仮病使っただけだよ、全然元気だし大丈夫」

「なんだよー心配したぞー」

僕のために、わざわざ部活を抜けてきたっていうのか
龍介はすでに僕と同じ方向に歩きだしている。

「あれ?部活戻んないの?」

「今から戻っても部活終わってるだろうからなー、俺もサボりだな!」

僕に背を向け歩きだした、龍介の小麦色の肌は活発で明るい雰囲気がある
いつもクラスの中心にいて、ムードメーカーでトラブルメーカー
後輩たちからも慕われてるし、裏表ない性格のため先生からの信頼も厚い

そんなみんなにとっての太陽のような存在である彼の友達が僕のような奴でいいのだろうか

「...龍介」

ふと不安になって、小さく声に出す。

「なんだ?律」

驚くことに、ちゃんと彼は拾ってくれた。

「僕、本当に龍介の友達でいいのかな」

きょとんと数秒首をかしげた後 、「当たり前だろ!」君は言った。

「律は俺のブキヨーなとことか、いつもカバーしてくれるし 頭もいいし 勉強もできるだろ?
俺そーゆーの苦手だからさ、律のことすげーって思ってる。」

それに、と彼は続けた。

「律は俺のことよく気付いてくれるだろ?前の怪我の時も、うまく隠したつもりなのにバレちゃっててビックリしたよ
律は大事な俺の“親友”だ!いつもありがとうな!」

屈託のないよく晴れた青空のような顔で、龍介はニカッと笑った。
なんだよ、勝手に悩んだ僕が馬鹿みたいじゃないか

「僕、龍介が親友でよかったよ」



夕焼けの河川敷を二人でのんびり歩く。
間違いない、僕の誇れるところは

龍介っていう親友と出会えたことだ。

8/16/2023, 2:31:45 PM