作品No.9【2024/04/09 テーマ:これからも、ずっと】
ようこそ、いらっしゃい。あなたで、そう……何人目かしらね、ここに来るのは。思い出せないわ。
でも、何人目であろうと同じ。私にとっては、みんな特別な人よ。
みんな、新しい生活に、ワクワクして、ドキドキして、目を輝かせてここに来るの。夢を抱いて、それを叶えるために頑張るんだって、強い想いに溢れた人達が、いっぱいここに来るのよ。私は、それを応援してあげたいの。
確か——あなたの前にここに来た人は、和服を仕立てる和裁士になりたいって言ってたわね。もっと気軽に和服に親しんで着てもらいたいんですって。私、なんてすてきな夢なのかしらと思ったものよ。
その前に来た人は、週に一回、ギター一本でライヴに出ていたわね。物悲しげな音と歌詞が、私、とてもすきだったわ。
ふふ。あなたの目も、今までここに来た人達と同じね。明るく輝く、きれいな目だわ。
でもね、なんでかしらね。
来たばかりの頃はみんな、目を輝かせているのに、やがて沈んだ暗い目になっていくのよ。そして、そのままここを出ていくの。
私、それがすごくいやなの。なにがいやって、それを何度も見送らなければならないのがいやなの。
ごめんなさいね、来たばかりのあなたにこんな話をして。でも、ここに来たってことは、あなたにも叶えたい夢があるのよね? 私、応援するわ。
どんな夢をもった、どんな人が来ようとも、この場所に来る人をずっと応援する。
それが、これまでも、これからも、ずっと、私の楽しみなんだもの。
4/9/2024, 7:58:15 AM