『ただひとりの君へ』
この世に姿かたちが同じ者は三人いるという。
姿かたちが同じならどうやって見分けられるのか。
見目がまったく変わらぬ、君のドッペルゲンガーを区別する自信が、実はない。
君が好きなのは本当で、君の顔立ちだけが好きなわけじゃない。それは本当、誓って真実。
背丈、しなやかな身体つき、スカートはあまり好きじゃないとこ。浮かべる表情は、笑顔も涙も真剣な眼射しも怒り顔だってみんな大切で愛おしい。さらさらな髪、落ち着いた声のトーン、瑞々しい所作。
読む本の傾向(本格じゃないミステリが好きだよね)、英語が得意で数学が苦手教科。夢だった教師をあきらめて、いまは将来の目標を探しなおしている途中。
インコを飼っていて鳥が大好き。犬や猫は苦手。だけど怪我した迷い猫を見つけたときには躊躇なく獣医に見せて飼い主をさがすポスターをつくった。
何ひとつ洩らさず君が好き。
たぶん君の心に、魂に、惹かれている。
だけど、君をコピーしたようにそっくりな相手がもしいるのなら、間違わずに君を君と言い当てる自信がないんだ。
遭うかどうかもわからない君のそっくりな影に、遭ってしまったらどうしようと不安になる。
知れば知るほど、不安になる。
知れば知るほど、知らない君があふれてくる。
どうかこの世にただひとりの君を、もっと教えてください。ドッペルゲンガーなんて罠に引っかからないように、もっと君を知りたいのです。
1/19/2025, 10:24:38 AM