【これまでずっと】2023/07/12
これまでずっと、我慢してきた。
ずっと上から目線で、都合のいい時ぐらいしか話しかけてこない。
本当だったらぶつかるくらいがちょうどいいくらいなんだろうけど、あっちの方が力は強いし、怒ったら何しでかすかわからない。
だからいつも、あいつの機嫌を見計らいながら、ちゃんと空気読んでやった。
怒っているき、うるさくしないように絶好調だったピアノの練習をやめたり。
あいつが見たいテレビがある時は、何か言われる前に好きなアニメを中断したり。
2人だけになりそうな時は、自分から部屋に戻ったり。
-でも、そんな生活も、今日で終わり。
今日、あいつは家を出る。
母も父も、どこか悲しそうにしながら、これから上京する息子の背中を見守る。
はあ。これでようやく解放される。清々した。
-でも、なんだろう。この虚しさは。
私の胸の中に、小さな穴が空いたような感じがした。
今更言えるわけがない。
勉強とか生真面目に頑張ったりせず、ただ好きなことを楽しんでいるあいつが、羨ましかっただなんて。
ただ、そのまっすぐな瞳が、ただひたすらにかっこよかっただなんて。
わかってる。あいつが私のこと、大っ嫌いだってこと。
でも尊敬はしてた。それだけ伝わればよかったのに。
でも、今更言えるわけがない。
私はあいつが嫌いだ。
嫌いじゃなきゃ、ダメなんだ。
私は1人、笑顔でまっすぐに未来を見据えて進んでいく、兄の背中を最後まで目で追い続けた。
7/12/2023, 11:47:23 AM