『あの日の景色』
麦わら帽子に虫取り網。
丸ごと水に浸して冷やされた西瓜。
タンクトップに半ズボンで野山を駆け回る子供たち。
窓という窓が開け放たれた家。
風に吹かれてチリンチリンと鳴る風鈴。
日の当たる庭を眺めながら縁側で飲む麦茶。
そんな昭和の夏が、映画や歌詞には出てくる。
まるで日本の夏の原風景のように。
でもさ、これって平成や令和だからノスタルジックに感じるんだよね?
明治や大正の人達は、ちょんまげに着物で団扇を扇ぐ姿を懐かしく感じていたのだろうか。
『願い事』
――やけに具体的な願い事だな。
ショッピングモールの1階中央に飾られた笹竹に吊るされた1枚。
何の気なしに眺めていた中に、それはあった。
ほとんどの短冊が一文で真ん中に大きく書かれていたが、それは小さな文字でびっしりと紙一面に細かく記されていた。
何月何日何時何分に、これこれこういう事が起きますように。
要約すると、そんなことがいっぱい書いてあった。
これはもはや願い事ではなくて予言では?
本当に起こったらびっくりだな、とスマホで写真に収めようとしたが、何度シャッターボタンを押しても撮影できなかった。
できる限り覚えておこうと思ったのに、ショッピングモールを出たら思い出せなくなっていた。
それ以来、毎年同じような短冊がないか探してしまう。
7/9/2025, 2:23:57 AM