『冬のはじまり』2023.11.29
冬がはじまるこの時期は、庭の木に藁巻きをする。それは毎年、俺の仕事だったが、今年は長男が自分もやりたいと言い出した。
妹が産まれてから、ますます「お兄ちゃん」でありたいのだろう。
一緒に住んでいるのだから、みんなで協力しあおう、と口酸っぱく伝えていることを彼なりに理解して、こうして手伝ってくれるのだ。
次男が産まれた頃に比べて大きくなった長男を頼もしく思いながら、彼に手順を説明する。
長男が藁を巻いて、俺が紐で結ぶ。
俺の手元を真剣に見つめているので、ふと思い立ち
「やってみるかい」
と声をかけた。
長男はパッと目を輝かせて力強くうなずく。
彼の手を取って結び方を伝授した。そして、その次には自分でやってみると言ったので、まかせることにした。
大きくなったとはいえ、まだ力の弱い子どもだ。少し緩んでいたので、彼の力でもできるようにアドバイスをする。もちろん、褒めることは忘れない。
俺が藁を巻いて、長男が紐を結ぶ。今はまだぎこちないが、もっとお兄ちゃんになったら、僕に任せてと胸を叩くのだろうか。
それを見ながら、大きくなったなぁなんて感慨にふけって……。
想像しただけで泣きそうになったので、上を向いてごまかした。
冷たくなってきた風が、冬のはじまりを教えてくれる。
11/29/2023, 10:35:16 AM