【安心と不安】
安心と不安が行ったり来たり。ゆりかごのように、ふらふらと。時がすぎるほどに概念は曖昧になる。
「どうしたの?ぼーっとして」
「あ、うん。ごめん。ちょっと考え事」
「大丈夫〜?疲れてるなら、無理しないでね。私もいつだって話くらい聞いてあげるからさ!」
「うん。大丈夫。大体、芽衣が側にいるんだ。悩みなんてあるはずないだろう?」
ガシガシと、大切な彼女の頭を撫でる。芽衣は始め抵抗したが、撫で続けると大人しく頭を委ねてきた。
「……そういえば、セット大変なんだっけ?」
「そ〜だよ〜! 毎回言ってるよね!! 気合い入れてるんだって!」
「それは、俺と会えるから?」
「……もうっ! それも毎回言ってるじゃん!」
そう言うと、芽衣はぷくーっと頬を膨らませてそっぽをむいた。
俺はそんな芽衣の、膨らんだほっぺたを指で突くのが好きだ。
「突っつかないでよ、もう」
俺の可愛い彼女は、そっぽを向いたまま、鏡と睨めっこをしていた。毎度ご苦労なことだ。
突きながら、ふと思案に耽る。可愛い彼女がいて、こんなにも楽しいのに。どうしてこんなにも不安を感じるんだろう?
「ほんとにどしたの? 来人。やっぱ今日ちょっとおかしいよ? 今日はお家デートにする?」
そんな不安を察したのか、芽衣は顔を覗き込んでくる。ああ、今間違いなく幸せだ。そうだ。そうに違いない。
だから、笑ってないと。
「……大丈夫じゃないよ」
「……へ?」
「ちゃんと分かってる。大丈夫じゃないんだよね」
「め、芽衣?」
「だからさ、泣いていいんだよ」
布越しに体温が伝わる。彼女が俺を抱きしめていた。
「……何してるんだ?」
「大丈夫、大丈夫だよ」
彼女はそれしか言わない。同じことしか話せない人形のようだ。
そんなの、そんなの芽衣じゃない。
……あ。
そんなの、芽衣じゃない。
安心と不安が行ったり来たり。ゆりかごのように、ふらふらと。時を過ぎるほどに曖昧になった概念が、一つに結ばれた。
目が覚めた。
_あとがき_
改訂するつもりが、結局他のことに気を取られできませんでした。はー。怠惰怠惰。
1/26/2026, 8:16:43 AM