謎い物語の語り手

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【空に向かって】

どんよりと雲の掛かった暗い空を見上げている。
まだこの絶望が満たした部屋よりは明るい。

数日前から誰も掛からない罠をぶら下げて、ただそこに掛かることのない獲物を鏡越しに見た。

よれたスーツを着た獲物が映っているだけだった。

昨日の夜、帰ってきてからそのままベッドにも入らず寝てしまっていた。

フローリングの冷たさを背中に感じた。
その冷たさですら今の自分には不充分だった。

「しょうもないな。本当に」

祈る神もいない。ただ光の差し込まない空に向かって呟くだけで、その声も虚空に消えていく。

病むことも健やかでいることも叶わない人生に、救いなんてないんだよな。

4/3/2025, 1:01:46 AM