「出会ってもう12年……ですか、時の流れは早いですね」
「ね!これからも色んな所行こう?」
「もちろん、沢山行きましょう」
ぎゅっと手を繋いで歩く女子2人。中学生の頃から、先輩と後輩の付き合いである彼女達は、今日もカフェ巡りをしていた。もう日が沈み始め、空は薄暗く色を変える。
「そういえば、𓏸𓏸さんは彼氏とどうなったんですか?」
「んー……特に進展はないね」
「もう付き合って2年……ですよね?」
「そうだねぇ」
「彼の方からは何かアプローチ……とか、ないんですか?」
「……んー、無い、かなぁ……最近冷たい……し、」
「そうなんだ……𓏸𓏸さん可愛いのに勿体無い」
「××の方が可愛いでしょ」
「そんな事ないです!𓏸𓏸さんすっごく美人だし、」
「あはは、ありがとね」
波風の心地よい防波堤まで来ると、空は真っ暗になり星々が輝いていた。××は𓏸𓏸の前に立ち、ニッコリ微笑んだ。風の音が静かになったような気がする。
「𓏸𓏸さん」
「何?」
「あなたがいたから、私は出会えた」
「……えっと、急に何の話?」
「最高の人に出会えた」
「××……?」
「私ね、」
××はおもむろにバッグを開き、𓏸𓏸との思い出の品を次々海に落としていく。何をしているのか理解出来ず、困惑している𓏸𓏸の腕を引っ張って抱きしめた。
「私、あなたがいたから∅∅に出会えました」
∅∅……𓏸𓏸の彼氏の名前。否、𓏸𓏸の“元”彼氏の名前。
「ここまで長かったです。とっても長かった」
「ど、ゆうこと」
「ありがとうございました。𓏸𓏸さん」
ぼちゃん!と音がして、この世界の地上から𓏸𓏸の姿が消える。××は、星々が反射する海を見てニッコリ微笑んだ。
『あなたがいたから』
6/20/2024, 10:31:53 AM