桜散る
釉薬が固まり、独特な香りが少しずつ薄れてきた美術準備室の片隅で、先生は転寝をしていた。椅子を行儀悪く、カタンカタンと斜めにしながら、窓枠に肘をついていた。カホンのような椅子は、釘が飛び出していた。
起こすべきか起こさぬべきか。そもそもが狸寝入りだと分かっていながら、そんなことを考えてしまう。
空は嫌味なくらい晴れている。
先生は、毎日夜遅くまで、試験対策に付き合ってくれた。
スランプに陥った十月頃、自暴自棄になっていた自分に根気強くアドバイスをくれた。
校則でスマホは持ち込み禁止だけど、今日だけは良いと、何かあれば先生が説明するからと言ってくれた。
一緒に確認しようって約束したのに、待ち切れずに見ちゃったのがいけなかったのかなあ。
先生はおそらく開口一番に、白々しく「おお、どうした?」と言ってくるんだろう。
ああ、いやだ。こんな時に限って、空は嫌味なくらい晴れている。
4/17/2026, 10:25:23 AM