冬山210

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『1年後』

1年後、僕は君の隣にはいない。
諦めてしまったことをどうか許して欲しい。


「君を一生幸せにするよ」

そう言ったのは僕だった。
そして君と契りを交わしたんだ。

でも、きっと君は泣いているんだろうね。
全然幸せになんてできなかった。
一生幸せにする、なんて僕には無理だったんだ。
その気持ちは嘘じゃないけれど。

君にはずっと笑顔でいて欲しかったから、
本当のことは話せなかった。
君を巻き込みたくなかったんだ。
……いや、違うね。
君といる時間をそんなことに割きたくなかっただけだ。
君と二人でいる時は、幸せのままでいたかった。

きっと君は自分のことを責めてしまうのだろう。
でもそれは違うよ。君は何も悪くない。
話さなかったのは僕だし、悪いのも僕だ。
君が僕のことを大切にしようとしてくれていた以上に、
僕が君のことを大切にしたかった。


ごめんね。
君のことを幸せにすることはできなかったけど、
僕の人生は君がいたことで最期まで幸せだった。
どうか君は長生きしてね。

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6月17日に書いたお題『1年前』の男性視点。
よければそちらも併せてどうぞ。

6/25/2023, 3:49:34 AM