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【やわらかな光】

昔から、干したての暖かい布団にくるまって眠る夜が好きだった。夢と現の狭間でまどろむあの感覚が、子供心に心地よかったのだ。

今、思えば、そんな何気ない日々が、何より大切だったのかもしれない。

まだ、小学生で、幼かったあの頃。僕が学校に行っている間に布団を干してくれた母も、ソファに腰掛けて行ってらっしゃいと声をかける父も、待ってよ、なんて言いながら慌てて支度をする妹も、みんな懐かしく思えた。

今年の四月から大学生になった僕は、実家の二つ隣の県に引っ越した。高校時代、思春期真っ只中だった僕は、早く家から離れたくて、大学に受かったと同時に新居を探し始め、春休みの間には、もうこっちに越して来てしまったのだ。

慣れない環境は確かに楽しかったけれど、どうしても日々の疲れは溜まり、気分が沈むこともある。
だから、懐かしさに浸ってしまったのだろうか。

新居に合わせて買った真新しいベッドに寝転び、スマホを手にとってメッセージアプリを開く。
久しぶりに見たアイコンに、変わってないな、なんて思って。
そして…、そして、今度の冬休みは帰るよ、とメッセージを送った。

気が抜けたら眠気が襲ってくる。明日の一限はなんだっただろうかなんて思いながら、そっとスマホを閉じる。

おやすみ、そして、今度の休みは布団でも干そう。
あの懐かしい思い出を、まだ覚えていたいとそう思ったから。

10/17/2024, 5:03:01 AM