9月16日
祝日があるわけでも、学校が休みになるわけでもない。
俺の誕生日でもなければ、特別な記念日というわけでもない
少なくとも、この町に引っ越してくる前までは
この地域では、9月16日の夜に祭りがあるらしい、妖怪を労る祭りだとか、仮面を付けていないと妖怪に連れ去られるという話だ。
「くだらない」
俺はそう思った。
高校生にもなって妖怪などなんだの信じる理由がない。
そして夜になって提灯の赤い光が町を照らした。
思ったより大規模な祭りだ。
俺は行きたくなかったが、両親に無理やり連れていかれた。
周囲の人はみな、仮面を付けてる。
鬼、天狗、狐、どれも表情がなく、誰が誰だか分からない。
俺も仮面をつけていた。
けれど息苦しさに耐えられなかった俺はすぐ森へ行った。
そこで俺は仮面を外してしまった。
その瞬間背筋が凍った。
「外しちゃったんだ」
声がした。
振り返るとそこには一人の男が立っていた。
狐の仮面を付けて紺色の着物を着てる、背丈は俺と同じくらいで声も若い。
仮面の奥からクスッと笑う気配がした。
「それダメなんだよ、この祭りでは」
「、、脅かすな。妖怪に連れ去られるってやつだろ?」
「うん、連れ去られるよ」
彼はそう答えると俺に近づき仮面越しにじっと見てきた。
「君引っ越して来たばかり?」
「なんでわかる?」
「知らない顔だから。」
その言い方が妙に引っかかった。
「僕たちはね、この日しか外を歩けない。人の振りをして混じって仮面つけて」
ぞくり、と背中が震えた。
「僕たち、?」
「そう、妖怪」
あまりにもあっさりそういった。
狐の仮面の奥で少年は笑ってる気がした。
「君は運がいいよ。外したのが僕の前で」
「連れ去るのか、」
「別にそうしてもいいけど、君は綺麗な顔してるからね」
その言葉に理由もない寒気がした。
「それ、、褒めてるのか?」
「ううん、目印」
「、、は?」
少年は楽しそうに首をかしげたが俺には少し恐怖を感じさせた。
「次会った時、間違えないため」
森の中で、ざわり、と何かが動く気配がした。
「おや、君は人気者だね。それもそうか、都会生まれの綺麗な人間はレアだからね。でも先に目をつけたのは僕だから」
彼はそう言って俺の手首を掴んだ。
痛かったが、その手はすぐ離された。
痛みは引いてるはずなのに、掴まれた場所はいつまでも熱を持っていた。
「今日は帰っていいよ。仮面をつければまだ人間でいられる」
「まだってなんだよ、」
問い返した時、彼の姿は無かった。
その夜、寝る前に掴まれた手首を見た。
そこには見たことの無い赤い紐のブレスレットが着いていた。
それはまるで誰かに「ここだ」と示されてるみたいだった。
「特別な夜」
1/21/2026, 10:53:50 PM