「子供のままで」
今日も自称マッドサイエンティストは機械を仕事をしている……ように見せかけて漫画を読んだりゲームをしたりしている。……随分と忙しそうで何よりだ。
「……なんだい?ボクがダラダラしているように見えるとでもいうのかい?!!そんなわけないだろう!!!漫画を読むのもゲームをするのも、ボクにとっては文化理解の一環なのだよ!!!」
はいはい、悪かったよ。
……とはいえ、こいつは何をしていても楽しそうだ。
いつからだろう。何をしていても素直に楽しいと思えなくなったのは。笑えなくなったのは。
重苦しい思いが付き纏うようになったのは。
……こんなことを考えたって仕方ないのはわかっている。
でも、こいつを見ているとついそう思ってしまうんだ。
なんで自分は、こうも仄暗い心をしているんだろう。
自分も小さなこいつみたいに真面目に学んで、素直に喜んで、笑えるように、純粋でいたかった。
せめて感受性だけでも、子供のままでいたかった。
「一応、知っているとは思うけれども!!!ボクはキミたちニンゲンよりもずっと歳をとっているし!!!全然子供ではないのだよ!!!」
「だが!!!公認宇宙管理士としてはまだまだペーペーの新人である事も事実!!!確かに子供みたいなものかもしれないね!!!」
「まあ純粋かつ老獪な部分がある自覚がないと言ったら嘘にはなるが、キミと過ごしていく中で、キミがもっと満たされてくれたら嬉しいって思っているのは本当だよ!!!」
……もっと満たされて欲しい、か。
見た目も振る舞いもほとんど子供にしか見えないが、こいつは誰よりも宇宙のことを、この星のことを、そして自分のことまで大切に思っている。
それが使命だと言ってはいたが、だからってなんの取り柄もない自分にまで優しくする必要なんてないはずなのにな。
「キミがいなけりゃボクは宇宙を守れないからね!!!協力してくれるニンゲンとなれば尚更無下にはできないよ!!!」
そうか。……ありがとう。
そんなことを思いながら自分はこいつの頭を撫でた。
見た目通り柔らかい髪の毛だな。
「???……あー!!!今のはアレだね!!!動物とか子供に対して何かいいことをした時とかの!!!頭を撫でる行為だね!!!ニンゲンって本当に頭を撫でるんだね!!!」
「……ふと思ったが、もしかしてキミはやっぱりボクのことを子供だと思っているね……???ボクの方がずっと年上なんだぞ!!!別にいいけど!!!」
悪かったよ。これからもちゃんと元気でいてくれよ。
「今度は老人扱いかい?!!どっちかにしたまえよ!!!」
不機嫌そうに頬を膨らませる。やっぱり子供じゃないか。
……そうだな。これからは自分もこいつみたいにいっぱい楽しく笑って、喜びながら暮らしたい。
そう思って漫画を読むマッドサイエンティストの後姿を見つめた。
5/13/2024, 12:26:13 PM