シオン

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 初心に立ち直ってみれば、彼とボクとの出会いは演奏者としての彼と権力者としてのボクのいわば対立構造だった訳だ。
 なのに気がついてみたら、もう既に仲のいい関係になっていることは言わずもがなである。
 毎日毎日、彼が弾くピアノの演奏を聞いて、仲良く会話をして、まるでそれは友達のようで、とてもじゃないけれど対立しているといえないようなものである。
 でもそれでいいんじゃないかと、今は思えてしまうほどにボクは彼のことを好きだったのだ。
 変な意味じゃない、恋愛感情でも何でもない。 ただ彼のことをまるで友達のように感じていただけだ。権力者として、それはとても正しくないことだけれども、それでもボクは今はこれでいいと思っている。
 本当は対立しなくてはいけないかもしれないけれど、ボクは彼のことが好きで、友達だと思っていて、今はそれでいいんじゃないかと。
 権力者集団に命令されたこととは、今の結果と真逆かもしれないけれど、それでも、うまくいかなくてもいいんじゃないかと今はそう思っている。

8/9/2024, 2:54:17 PM