形の無いもの
「大切なものは目に見えない」と狐が言った。
心で見なければものごとはよく見えないってこと。大切なことは目に見えないんだ。砂漠を旅する王子は知った。
そこに咲く薔薇が美しいのは、誰かが大切に時間をかけて育てたからこそ、その薔薇は美しく大切にされるんだよ、だから嘘でも大切に育てられた薔薇だと自分に魔法をかけるんだ、反面教師だなんて浅くて安っぽい言葉で自分を産み育てた人を蔑むことは、自分を蔑むことさ。
問題は、大人になることじゃない、忘れることだ。
星が美しいのは、ここからは見えない花が、また誰かが自分と同じ様に、あの星のどこかで懸命に咲かせた花が咲いているからだね、命とはそういうものさ。
君はまだ、その命の反面しか見ていない、見ているのは、君の目と君の心、見つけるのも君の目と君の心、それらは何処から来たの、君の命は何処から来たの?
この砂漠が美しいのは、何処かに輝く井戸を隠し持っているからだ。
そして、いつも狐が言った、大切なものは目に見え無い、肝心なことは目に見えないにまた戻る、すべてのはじまりが、そこだからだ。
目に見えるものを追いかけることは、とても容易い、例えば富や名声やお金それで買えるいくつかのブランド品。けれどそれらは欲や見栄は満たしてくれても、情や愛は満たしてくれない。
得てして幸せそうにしているのは、欲や見栄を持たない人で、不幸せそうにして苦しんでいるのは、欲や見栄や体裁に拘る人だ。賢い人は気づいてはいるが、それが止められない、それが欲望というやつだから。
王子は広い砂漠を旅して気づいたことを日記に綴った。そしていつも狐が言った「大切なものは目に見えない、形の無いものだ」ということを刻んで、今日もまた砂漠に眠る井戸を探しそこに湧く水の輝きを探し、誰かが種を蒔き大切に水を与え育てた薔薇を探す旅を続ける。
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
「星の王子さま」
抜粋、我流解釈(笑)
解釈を自分でし自分の世界に取り入れることを学ぶ大人のための名作童話。
大切なことは目に見え無い、形の無いもの、そして、自分で探し見つけるもの、星の王子さまのように。
令和6年9月24日
心幸
9/24/2024, 3:07:46 PM