本日のテーマ『またね!』
別れの挨拶だ。
しかし悲観的な意味合いではない。むしろ『また会おうね!』と『また会えるよね?』が含まれた希望に満ち溢れた素敵な挨拶である。
もっとも俺自身は産まれてこのかた、その言葉を一度たりとも口にしたことはないのだが…
小さな頃から俺の別れの挨拶は『バイバイ』だった。
それは父さんがハンディカメラで撮った映像に残されているビデオテープを実家に帰った際に見返して確認しているので間違いない。
例えば、走り去る電車を見て『バイバイ』と手を振る俺。
オリの中に閉じ込められている動物園の動物たちに『バイバイ』と手を振る俺。
親戚の集まりで叔父さんが実家に帰ってきた時、母さんから『おじちゃんにバイバイしてあげて』と頼まれても恥ずかしがってバイバイしない俺。
このように俺の別れの挨拶は『バイバイ』と共にあった。
しかし高校生になると周りの友達は皆、別れの際に『ほな!』や『じゃーの』を使用するようになってしまった。一人だけ手をブンブン振って『ばいばーい』というのもなんだか子供っぽくて恥ずかしかったので、俺はその言葉を封印した。
ちなみにその頃の俺が使っていた別れの言葉は『…ん』とか『んじゃ』だ。『ほな!』や『じゃーの』っていうのもそれはそれで恥ずかしかったので、そんな感じになってしまったのだが、その挨拶も今になって思い返すとどうかと思う。社交性ゼロの無愛想なコミュ障みたいだ。
だいたいそれで合ってるけど…
…話を戻す。
高校を卒業して専門学生になると皆『お疲れ~』と言うようになった。なんなら解散する時だけじゃなく、朝の挨拶も『おはよう』じゃなくて『お疲れ~』だった。みんな小遣い稼ぎ程度のアルバイトやそれほどしんどくもない学校の課題に精を出したり、男女関係の面倒臭い青春に空回っていたりして、無意味に疲れていた。だからきっと顔を合わせた際に用いる挨拶が『お疲れ~』だったのだろう。
そして現在。
大人になった俺が活用している挨拶は『お疲れ様です』だ。
仕事をあがる時、職場の人に『お疲れ様です』
スマホで送るメッセージの文頭にも『お疲れ様です』
推しのVチューバーが配信を終了する時に送るコメントも、もちろん『お疲れ様です』だ。
このように別れの挨拶として『またね!』が入り込む余地など俺の人生のどこにもないのだ。
でも一度でいいから口にだして言ってみたい。『またね!』って。だって、とても素敵な言葉だ。
明日、言ってみようかな。
バイトが終わった後、店長や後輩たちに向かって『またね!』って爽やかに微笑みながら片手を軽く挙げて。
いや、やっぱりよそう。そんなキャラじゃない俺がやったら誰からもツッコミすら入れてもらえずに気まずい空気な感じの誰も何一つとして得しない最悪な状況に陥ること間違いなしだ。
死ぬまでに一度でいいから口にする機会があるのだろうか。
だれか俺に『またね!』って言わせてくれないか?
その時は最高の笑顔で言うと約束するから。
4/1/2025, 3:12:15 AM