整然と商品が並ぶ陳列棚を前に
ある男が商品を見渡していた。
少し離れた横には車イスの貴人。
その男はふと話しかけた。
「もし何かあれば取りますよ」
高段の商品を確認したかった貴人は
感謝の中に少しだけ申し訳なさを含みつつ
その男にお礼を言った。
すると男は言った。
「私はあなたが使うために存在すると思ってください。そもそも私はここの商品を探してません。なのに何故か無意識に探す動作をしていた。たぶん私の人生の流れではなく、あなたの人生の流れに影響されて動いていたのでしょう。そうであるならば私はあなたに使われるためにここにいて、あなたに使われることが今の私の喜びと言えるでしょう。」
貴人はどう反応すればいいかわからず
複雑な顔をしていた。
感謝していいのか罪悪感を感じればよいのか。
即座に怪しい男は続けた。
「おっと、申し訳なく思わないでください。私なんて周りの人の人生を狂わせていると言っていいくらい大きく私の人生の流れに他人を引き込んでいるようですが、流れがある以上、巻き込まれてしまうのは仕方のないことなので、私からはとにかくいつも感謝しかありません。」
貴人はさらに申し訳なさそうな顔をして
「ありがとうございます」と
その狂わす男に返した。
11/21/2024, 11:10:32 AM