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これで、最後にしよう。
あなたの左手の薬指に光るシルバーに、胸の奥で燻っていた恋心をとうとう遠いどこかに置き捨てることを決めた。
ストローを掴む手に合わせて光を反射して煌めくそれがやけに目について、わかっていたことなのに今さら胸が痛む。
あなたに似合うピンクのリップで飾られた唇が弧を描いて、見るからに柔らかそうな手が私のマグカップを握る手に重ねられた。
「君に、結婚式に来てほしいの」
親友としてね、なんてあなた以外に言われたらきっと心から喜べる言葉が添えられる。
引きつりそうになる頬を抑えて、今にも溢れだしそうな涙を堪えて、何よりも嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ありがとう。私も行きたい」
あなたが心の底から嬉しそうに笑う。
きっと私が知っている中で一番綺麗な薬指の使い方をしたあなたは、何よりも美しくて、何よりも憎らしかった。


これで最後

5/27/2025, 12:44:27 PM